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「そうじゃなきゃ。ははっ!笑ってくれなきゃ、がんばった甲斐がない」
俊冬は、もう目もよくみえていないらしい。そして、耳もよくきこえていないにちがいない。
おれたちが笑っておらず、泣いていることに気がついていないのだ。
「きみはよくがんばったよ。でも、もうがんばらなくってもいい。もういいんだ。ぼくのお守りで疲れただろう?ぼくは大丈夫。きみの分まで生きてみる。生きられるところまで生きてみるから」
俊春は、Botox價錢 しっかりとした静かな口調で俊冬に語りかけている。
その様子が、いじらしすぎてよりいっそう涙を誘発する。
「ああ、ああ。お守りで、おまえのお守りで疲れたよ。でも、悪くない。悪くなかった」
「俊冬っ、きついことをいってごめんな」
両膝に石が喰いこむのもかまわず、両膝立ちで二人ににじり寄って謝った。
「餓鬼のころ、ミスター・ソウマに日本に来いって誘われたんだ。そのときに組織を抜けて日本に行っていたら、きみとこいつとおれとで剣道や勉強をして、青春しまくれたかな?」
「ああ。おまえも俊春も剣道は毎年全国制覇できただろうし、勉強は天才少年と大騒ぎになっただろう。夏にはアイスを喰って、冬は寒稽古だ。こたつでミカンを喰って、クリスマスにはケーキとフライドチキンを喰って……。二月には、おまえと俊春はバレンタインのチョコをたくさんもらうのに、おれは一個もなくって、おまえたちのチョコを分けてもらって情けない思いをしながら
かれに、ずいぶんとひどいことをいってしまった。をかじるんだ」
「喰うことばっかりだ。だけど、愉しそうだ」
「ああ、ぜったいに愉しいよ」
「ハジメ君、ごめんな。ミスター・ソウマを救えなかった。きみから奪ってしまった」
俊冬は、意識が混濁しているのだ。思いつくままにいってくる。
「おまえらのせいじゃない。仇を討ってくれたじゃないか。感謝しているよ。親父のことだけじゃない。おまえたちはおれも救ってくれたし、ここにいる人たちも救ってくれた。ここにいない大勢の人たちも、おまえたちのお蔭で救われた」
かれの血まみれの掌を握った。
ダメだ。涙で視界が悪いし、いいたいことはいっぱいあるのに言葉がでてこない。
「救われたのは、おれだよ。ありがとう」
かれのもうみえないであろうから涙がこぼれ落ちた。
「俊春のことは心配するな。副長と相棒もついている。おまえほどじゃないが、いっしょにいて笑わせるから。一人ぼっちにしないから」
かれは、かすかにうなずいた。
「俊冬、いい子だ」
副長は、そのタイミングでかれの頭をなでながらやさしくいった。それはまるで、わが子をいたわるような父親のようにみえる。
「さきに逝って待っていろ。遅かれ早かれだれもが死ぬ。どれだけ待たせることになるかはわからんが、地獄で再会してまたでかいことをやろう」
副長も泣いてはいるが、しっかりとした口調である。
どうやら、暴言は吐き尽くしたらしい。
ってまた、副長にメンチ切られるかグーパンチを喰らうかと思ったが、もはや副長にはおれのだだもれの心の叫びを感じる余裕はないみたいである。
「転生……。みんなそろって生まれかわったら面白い、かもしれない」
おれが握っていない方のかれの掌が、副長の掌を求めている。
副長がその掌を握ってやった。
「ああ。おまえらがずっとさきの時代からやってきたのとおなじように、生まれかわりってのがあっておかしくない。この面子にかっちゃんや源さんも加えて、おまえらが生まれ育った時代でひと暴れしてもいい」
だとすれば、現代の日本はとんだ災厄を招くことになる。
だけど、最高にクールな思いつきだ。
そう思ったのは、おれだけではない。みんなが口々に同意している。
「面白そうです。きっと面白いはずです」
「いっておくけど、つぎはぼくが年上だからね」
俊冬が副長のアイデアに同意した瞬間、俊春がピシャリといった。
「それで転生後に再会した瞬間、きみにはっきりと伝えるんだ。「消えてなくなれ」ってね」
俊春は、子どものころに初対面で俊冬からいわれた一言を、相当根に持っているようだ。
「しつこいな。あのときは、その言葉しか思い浮かばなかったんだ」
混濁する意識の中、俊冬は呆れ返っている。
「ふふふふんっ」
そのとき、相棒がおおきく鼻を鳴らした。鼻息が、俊冬の血のこびりついている頭髪を揺らめかせる。
「なぜ?なぜ、序列は鉄板なわけ?意味がわからない。ぼくは、何度生まれかわっても最下位なの?」
俊春が情けない声で訴えた。
どうやら、相棒は俊春にたいして塩対応したらしい。
つまり、相棒が一番で二番が俊冬でラストが俊春、という順番は不変だというわけである。
「わかったよ。順番はあきらめる。このままでいいから、ぜったいに生まれかわろう」