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永倉は豪快に笑って,そう言うのも悪くないぞと肩を叩いた。
そこでようやく三津は引きつりながらも笑顔を作れた。
永倉は笑みを浮かべながらうんうんと頷くと宗太郎に目をやった。
「おい坊主。しっかりとお三津を送ってやってくれよ。迷子になるんだろ?こいつ。」
「坊主ちゃうわ宗太郎や。Botox價錢 言われんでもそれが俺の役目やし。」
言われなくても分かってると口を尖らせた。
「そりゃ頼もしいな坊主。その威勢の良さ俺は好きだぜ?」
「だから坊主ちゃう!そ・う・た・ろ・う!」
何度もそのやり取りを繰り返す二人を見かねて三津が割って入った。
「宗,年上の人への口の利き方気をつけなって言ったやろ。」
頬を抓り上げれば柔らかくてよく伸びる。
「まぁまぁお三津,ガキなんざこんなもんさ。
じゃあ俺も行くわ。またな!」
永倉は去り際にはやんわりと微笑んだ。
その柔らかな目元は複雑な胸の内を見透かしているんじゃないかと三津は思った。
そして自分の手を引く宗太郎も,小さいながらに何かを察知して気を遣ったんだと感じた。
「帰ろっか。」
遠ざかって行く浅葱色の列を眺めながら呟くと,小さく“おう”と返ってきた。みんなと遊んで,今頃は“あー楽しかった!”って,今日の出来事をトキに纏わりついて話していたはずなのに。
『この感じ嫌や…。』
胸にもやもやした気持ちが蔓延る。
それに宗太郎の言っていた変な奴につけられてないかと言われたのも気になる。
「お三津ちゃん?」
声をかけられてはっと我に返った。
抱えている桶に豆腐が一丁入れられていた。
「どないしたん?恐い顔して。」
『あぁ,そうやったお豆腐買いに来てたんやっけ…。』
何かをする事で気を紛らわそうとお遣いに出た。
桶に視線を落としてから,眉尻を下げて情けない顔で笑った。
『恐い顔やなんて土方さんやあるまいし…。』
何でもないと首を横に振ったが,お三津ちゃんは嘘をつくのが下手だなぁと笑われた。
「よし!お三津ちゃんが元気になるようにおまけしたろ!」
桶の中にお豆腐がもう一丁追加された。
「あ…ありがとう。これで明日もいっぱい働けるわ!」
励ましてもらっておいて情けない顔はしてられない。
にっと笑っていつもの三津だというのを見せた。
それから夕餉の事で頭をいっぱいにしながら身を翻した。
それからはっと立ち止まって念の為にきょろきょろ周りを見渡した。
『別に変な人なんておらんよなぁ?』
あの時は気にしなかったけど,今になって“もしかしたら…”と思ってしまう。
「考え過ぎか…。」
宗太郎の言う事を鵜呑みにした自分を笑って家の中へ入った。
『急に警戒心を見せやがって…。』
絶対に気付かれない自信があった斎藤が一瞬ひやりとした。
宗太郎が離れたからだいぶ三津に近付いていた。
何かあればすぐに庇えるように。
『それ以前に至近距離で見ていないと見失ってしまう…。
あいつの気配は未だに掴めんからな…。』
今回の任務は自分には不向きだと悟った。
『俺よりも適任な奴はいるんだが…。』
とりあえず帰って三津は元気だと報告してやろう。
あちこちから夕餉の匂いが漂う中,斎藤は屯所へ急いだ。
まずは土方に報告せねば。
それから明日の任務の指示を受けて…。
頭の中で段取りを巡らせながら土方の部屋の前までやって来た。
「斎藤です,失礼します。」
無駄な動きは一つとせず,障子に手をかければ,
「あーもう!鬱陶しい!出てけ!!」
土方の怒声が響き渡る。静かに障子を開くと,土方の傍らに寝そべってちょっかいを出す総司の姿が目に飛び込んだ。
「沖田,お前は副長を何だと思ってるんだ…。」
いくら古くからの付き合いとはいえ,礼儀の無さに真面目な斎藤は苛立ってしまう。
「斎藤さん!お帰りなさい。今ちょうど土方さんの為に話し相手になってたんですよ。