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元周が当たり前のように広間で一緒に夕餉をとっている。作ったセツはお口に合いますか,量は足りてますかと元周の側を右往左往。
「美味いぞ。量も充分だ。すまんな気を遣わせて。」
満足そうに笑う元周に,セツは良かったですと胸を撫で下ろした。
「何でまた今日はこちらに泊まるんです……。」
高杉は作戦があるなら全て話して欲しいし,何故こうする必要があるのかこっちが納得がいく説明をしてくれと頼んだ。
「それは千賀がそうせいって言ったからなぁ。」
「あ?それだけ?」 https://cutismedi.com.hk/promotion/15/%E8%82%89%E6%AF%92%E6%A1%BF%E8%8F%8C%E7%B4%A0_680
高杉はいい加減にしろよと言う目で元周を見た。元周は本当にお前は無礼だなと言い返した所で箸を置き,お茶で喉を潤した。
「怒り狂った女将の矛先が参謀に向いて,何か仕出かしに来た時に私がいた方が都合がいいやろ?」
確かに問題を起こしたところを藩主に見られていれば言い訳のしようもない。
「参謀に手出しした所で取り抑えれば一発なんやが。参謀を慕っとるのは本当みたいやな。こいつを傷付ける気はない様だ。
だが,松子への悪意は認めたのを聞いたけぇ充分じゃ。」
元周は後は任せろと豪語した。
『こっちは神経すり減らしてるのに楽しそうやなぁ……この人は……。』
高杉はげんなりした顔でその姿を眺めた。どうであれ明日にはこの地獄が収まると思うと少しは気が楽になる。
翌日,朝餉を食べているところに,
「ただいま戻りましたー!」
三津の明るい声が聞こえて,みんながピタッと動きを止めた。
「今の声……三津さんやんな?」
高杉が呟いたと同時に入江は箸を乱雑に手放して広間を飛び出した。それに続けと他の隊士達も慌てて廊下に飛び出た。
「三津!?」
入江が勢い良く飛び出すと目を丸くして驚く三津と,その隣りでくすくす笑う千賀が居た。
千賀の姿に入江は素早く姿勢を正して頭を下げた。
「おはようございます入江様。下を向いていては松子ちゃんのお顔が見えないでしょ?」
どうぞお上げになって?と言われ恥ずかしさで頬を赤らめながらゆっくり顔を上げた。目の前の三津は眉を顰め,複雑な感情を出していた。
「九一さん……ごめんなさい……。酷い事言ってごめんなさいっ!」
ぼろぼろ泣き出した泣き虫な三津に安心した。
「私っ何よりもっ周りの目が怖くてっ!嘘ついた。ホンマは居て欲しいのに,周りがどう思ってるかの方が気になって,私っ私っ!」
泣きながら必死に伝えてくる姿が愛おしくて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるけど,千賀の手前それをしていいものか悩んだ。触れようか迷った。二人の微妙な距離感に千賀は初々しいわと目を細めた。
「どうぞいつも通りになさって?」
そうは言われても藩主の妻に見られてると気が引ける。でも許されてる範囲の行為を自分が後ろめたく思えば,三津はよりあってはならない関係だと苦しむと思った。
考えたってどうしようもない。気持ちは決まってる。今は遠慮しなくともいいんだ。入江は三津の体をきつく抱きしめた。
「あれは許されとる範囲内やったか?」
広間から顔を覗かせた元周はにやにやしながら高杉に問いかけた。
広間から顔を出す主人を見つけた千賀は笑顔で小さく手を振った。
「あなた,着替えをお持ちしましたよ。」
千賀の言葉に荷物を持っていた侍女が元周の前に歩み出てそれを差し出した。
元周の名にハッとした三津は慌てて入江を押し退けて頭を下げて挨拶をした。
「気にせず続けてくれ。その先の先までしかと見届けてやるけぇ。」
入江は朝から何考えてんだこの親父はと言う目で元周を見た。元周はいいぞその顔と小馬鹿にしている。入江は完全に桂がいない間の玩具と化した。